後編 11/19「語る広場」トークセッションより
「キッズデザイン賞のお話、クロストーク」
助成:札幌市(2025年度 札幌市文化芸術創造活動支援事業)
教育×アートをテーマに語り合うトーク&交流イベント「語る広場」実施レポート(後編)
11月19日(水)、宮崎県のダンスカンパニー「んまつーポス」をゲストに迎え、教育とアートをテーマに語り合うトーク&交流イベント「語る広場」を開催しました。
前編に続き、後編ではトークセッション後半の内容をご紹介します。
- 前編:11/19「語る広場」トークセッションより「んまつーポスの活動紹介~地元宮崎から海外まで」
- 後編:11/19「語る広場」トークセッションより「キッズデザイン賞のお話、クロストーク」←今回はこちら
「語る広場」トークセッション
◆登壇者
豊福彬文さん(んまつーポス)
みのわそうへいさん(んまつーポス)
渡辺元佳さん(実験施設ZOKZOK)
◆モデレーター
森嶋拓さん(スパークプラグ・アライアンス)
(以下、敬称略)
▲んまつーポスの豊福彬文さんとみのわそうへいさん
キッズデザイン賞について
みなさん、キッズデザイン賞はご存知ですか?
(公式サイトによると「子どもや子どもの産み育てに配慮したすべての製品・サービス・空間・活動・研究を対象とする顕彰制度」と定義)
私たちは「子どもたちの創造性と未来を拓くデザイン」部門で毎年応募し、今年は内閣総理大臣賞を受賞することができました。
今年のプロジェクトは、子どもたちが社会に出て、自分たちにやさしいデザインを自分たちで見つけるという内容で行いました。
キッズデザイン賞には、有形だけでなく無形のイベントやプロジェクトなども含まれています。
初めて応募・受賞したのは2017年です。
東日本大震災後、福島県いわき市の「いわき芸術文化交流館アリオス」と連携して実施しているプロジェクト(2013年〜現在)が、キッズデザイン賞「復興支援部門」を受賞し、それ以降、毎年内容を変えながら継続してきました。
今年で 9年連続受賞 となります。
私たちの活動は、これまでスポーツからアート、アートからスポーツという考え方をベースとしているので、教育に重なり合うさまざまなアイデアが蓄積されています。
そして根底には「逆さから考える」ということがあり、今回は大人しかいないキッズデザイン賞の表彰式に「子どもたちを連れて行こう」ということを実は裏テーマにしていました。
(受賞プロジェクト「ここほれワンワン!デザインがザクザク!キッズプロジェクト」紹介動画)
地方だと、とくに若者の県外流出が問題になっています。
県外に出ること自体は悪いことではないのですが、地元の企業を知らないままというのはもったいない。
このプロジェクトでは、事前に子どもたちは企業について調べ学習を行い、企業視察では子どもたち目線で「やさしい」ポイントを探しました。その後、キッズデザインマップを制作。
「スリッパがはきやすい」や「担当者がやさしい」など、大人の視点では気づきにくい意見がたくさん出ました。
大人はあくまで伴走役。表彰式では「子どもの社会参画の好事例」と評価していただきました。
行政とのタイアップ企画でしたが、奇しくも昨年は宮崎市政100周年という記念すべき年。子どもたちと「キッズデザインを100個見つけよう!」とスタートし、すでに200個以上見つけました。
▶キッズデザイン賞
https://kidsdesignaward.jp/
▶ここほれワンワン!デザインがザクザク!キッズプロジェクト
https://kidsdesignaward.jp/search/detail_250176
▲実験施設ZOKZOKの渡辺元佳さん
11/19「語る広場」クロストーク
創作ダンスというあまり見向きされなかったもの、アーティストからも学校の先生からも一定の距離を置かれていたものに、新しい価値を見出したという点が素晴らしいですね。
東京滞在時は笑顔が少なかったアーティストが、宮崎ではたくさん笑っていたというお話も面白く、宮崎という地域だからこその価値を感じました。
みんな中央や上ということを目指しがちですが、実は価値のあるものは足元に転がっていたりします。
そこがんまつーポスの素晴らしいところだと思います。
すごく面白かったです。んまつーポスのお二人がお話されている時に目がキラキラしていて情熱を感じました。自分にも小学生と未就学児の子どもがいますが、子どもって本当に面白いですよね。好奇心があり能動的で。
創作ダンスは何も持たずに表現ができることが良いですね。
そして、そのことを子どもたち自身が知っているということは強いし励みになると思います。
20年間活動を継続されていることも感心します。
「世界中の誰とでも一緒に創造する方法を知っているよ」ということを、創作ダンスを通して伝えています。
子どもたちに将来振付家やダンサーになってもらいたいのではなく、「人と正解のないものを共創する方法がいくつもあり、僕らは創作ダンスというものを見つけて、強く握りしめている」というのが子どもたちへのメッセージです。
子どもたちや先生の価値観を揺さぶることをしたいと考えています。
創作ダンスの先にどんな将来があるのかという、キャリア教育が難しいという側面もあります。
音楽は音楽室という場があり、作曲家の肖像画が並んでいてキャリアパスという点で分かりやすいですが、創作ダンスは体育館なのでイメージしにくい。
体育館を音楽室のようにイメージのふくらむ場所にできないかということも真剣に話しています。
進路を考える時、子どもたちは身近な環境に左右されますよね。
私は高校2年までスポーツをやっていましたが、アキレス腱を負傷してしまって。
テレビを見ていたらロダンの紹介があって「彫刻家という仕事があるんだ」と始めました。
きっかけは結構シンプルなものですが、やはり子どもたちのいる環境をいかに多様にするかが大切だと思っています。
実験施設ZOKZOKの前の道は中央小学校の通学路になっています。
この間、歩道に面した実験室でマルシェを開催して変なものをいっぱい飾っていたんです。
そうすると、子供たちが興味津々で見てくれて。
マルシェが終わって片づけたら「なくなった!」と大騒ぎです。
通学路にある異物というか、「こういうものもあって良いんだ」みたいな間口を広げるという側面も考えています。
共感します。お互いが働きかけるだけでなく、ただそこに存在している、身近にあるというだけでもすごく意味のあることですよね。
私たちの劇場もガラス張りにしましたが、子どもたちに「なんかやってる」「ずっと寝ているけど大丈夫?」と、動物園のようにアーティストを見てもらいたかったということもあります。
そこには確実に学びがあります。
一般的なダンスレッスンは、真似をすることから入ります。その他、さまざまな分野でも最初は真似から入るというケースが多いと思います。
創作ダンスというのはいきなり創るところから入りますが、どういった違いがありますか?
子どもたちはどうやって主体的に取り組むようになるのですか?
私たちは宮崎大学の高橋るみ子先生の元、大学発ベンチャー企業として創作ダンスを起点としたさまざまな教材研究と開発を行っています。
やはりゼロから「はい、創って」と言われてもできませんし、「創りたい」という気持ちも起こらない。
そこで、まずは枠組みを決めてあげて、創るポイントを明確に指定します。
実際に彼らが創るのは2割程度であっても、自主的に取り組めたら成功です。
逆に口出ししすぎて失敗したことも。子どもの感想に「おだんごの人に創ってもらいました」と書かれた時は悲しかったです。
私も子どものワークショップをやっていますが、最初の頃は手助けしすぎて「大人にいじられすぎた作品」というタイトルの作品が出てきたことがあります(一同爆笑)。
それ以降反省して、いかに自由度を持たせるかを考えるようになりました。
しかし、自由度を残しつつクオリティーも担保したい。
そのコントロールが大切だと思います。
また、子どもたちには成功体験を持ち帰ってもらいたいので、うまく導いてあげるということも難しいですが面白いですね。
長い時間にしないという点もポイントです。
10秒の作品を5分で作る、とか。
小学校では45分、中学校では50分が一コマ。
限られた時間で効果の最大化を図るためには、ルール決めも大事です。
必ず言うのは「否定をしない」こと。
それをルールに入れると創作が一気に加速します。
誰かがアイデアを出した時に「嫌だ」とか「かっこわるい」とか言い出すとなかなか先に進みません。
それぞれのアイデアを積み木のように重ねていく。
そのように、一人じゃ行きつけないところに行きつくのが創作ダンス。
全員が振付家なので、僕がグループに入ると僕も対等です。
枠組みとルール決めが大事ですね。
手伝ってくれる大人には「いいね」しか言わないでもらう、とかね。
子どもたちが集中してくるとだんだん無視されるようになり、そうすると自動運転モードになる。
最初しっかりサポートしてあげるということを意識します。
そうですね。ただ私たちが学校に出かけていって、完全に子どもたちだけで完結してしまうと寂しいし(やはり広がりや新たな視点は大事なので)「どんどんヘルプを使って行こう」とも伝えます。
そうやってすぐに「ヘルプ」って言える、ある意味“図々しさ”こそが「生きる力」にもつながるかもしれませんね。子どもたちに伝えながら自分自身にも言い聞かせている気がします。
創作ダンスが嫌だったという記憶を分析すると、「風になりましょう」「鳥になりましょう」とお題は与えられるものの、なんとなくで終わってしまったというように「やり切った」感覚がないからという点も挙げられるのではないでしょうか。
そこで私たちは作品として創った後はしっかりと踊り切ることも大事にします。
ゴール設定ですね。
また、身近な曲を使うようにしているので、授業が終わった後も踊っているということがあるかもしれません。
創作ダンスに適した年齢層というのはありますか?我が家の未就学児はよく踊りますが、小学生になるとあまりないかな。
入り口を何にするかということは工夫します。
中学生を対象としたワークショップで最近よくメタバースを取り上げます。
STEAM教育の一環でもあります。
入り口をメタバースやテクノロジーにして、出口をダンスにする。
具体的には、VRでアバターを作ろうと言ってグループワーク(アバター作り)を実施。
グループで創作したマスコットアバターで踊ってみる(と言っても、実際踊るのは生徒)。
VRゴーグルをつけていると恥ずかしくないのか、みんな踊れます。
そういう風に対象に合わせて教材作りを行います。
(授業の紹介動画)
これまで京都市立美術工芸高等学校で開発したダンス教材を、宮崎県立宮崎大宮高等学校文科情報科の生徒とも実施しました。
バーチャルとリアルを行き来しながら最終的にダンスを共創した『メタバースで汗をかく共創ダンスプログラム』です。
リアルとアンリアルを行き来しているうちに、高校生たちはいつのまにかリアルで汗をかいていました。
私は宮崎大学でも非常勤講師として授業を持っていますが、これを大学生ともやっています。
高校生は「独創」は得意だけど「共創」は苦手ということを先生方からよく伺います。
そういった依頼を受けて開発した教材です。
STEMからSTEAMになり、 A(Arts)と掛け算することで解決できることはものすごくたくさんあります。
いろいろなところにアートをかけ算して壁を突破できるということの良い事例です。
今日は学校教育とアートの掛け合わせということでお話を伺ってきました。
学校教育に対してチャレンジしていきたいと思っているアーティストは、たくさんいると感じています。
(予算やネットワーク不足など学校側の課題もあると思いますが)アーティスト視点で何が障壁になっているか、課題などあれば最後に伺えますか?
自分たちは(障壁は)とくに感じませんが、アーティストはアーティストのまま胸を張って「正解はないんだよ」(逆に全部正解だよ)と言い張れるからこそ意味があると思います。
学校からアーティストに対して「学習指導要領を読み込んでください」というのはナンセンスだとも思います。
アーティストだからこそできることがあるので、そこをつなぐコネクションやコラボレーションがあると良いです。
アーティストは突っ走って良いのですが、そこにアーティストと先生との合意がなければ、その時間もその後も先生が大変困難な状況に陥ってしまうリスクも。
担当の先生が「なぜこの人たちが来るのか」ということをしっかり理解した上で呼んでいただくこと。
そのためには打ち合わせは必須です。
アーティスト側も自分たちが去った後に授業をつなぐのは先生だということを理解しなければいけません。
学校の授業にアーティストが入っているという感覚を持つこと。
アーティストのワークショップではなくて。
アーティストは“生きた教材”であるということを示すために、あえて台車に乗って先生に運んでもらう演出をしたこともあります。
「今日この教材を連れてきました」と先生に言っていただいて。
終わった後は先生の授業にお返しして先生に締めていただく。
それが協働の在り方。
ある4年生児童の感想文に「この授業を作った先生はすごい」と書いていただいたことがあって、ガッツポーズでした。
(学校側へのアプローチに関するアドバイスとして)
「創作ダンスをやりませんか」と言っても受け入れてもらえない時期がありました。
しかし「コミュニケーション能力を育む授業」という点を前面に出してみると、学校側の課題とマッチして受け入れてもらいやすくなりました。
学習指導要領を読み込まなくて良いと言いましたが、やはり根本的なニーズを知っておくことは大事ですね。
先生とアーティストの相互理解で進め、目線を合わせること。
私は伊達市出身ですが、創作ダンスの記憶があまりないですね。伊達市でもやっていたのかな?
中学校の創作ダンスは平成24年に必修化されましたが、実は小学校における表現運動・表現遊びは、戦後からずっと必修として位置づけられているのです。
しかし、運動会の練習の時間に充てられてしまうことが多いので、渡辺さんのような感想をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
私も小学生の時にんまつーポスさんに出会っていたら、身体表現に目覚めていたかもしれないですね!
今日は大変興味深いお話をたくさんお聞かせいただき、ありがとうございました。
教育に関係する方もたくさんご参加いただいていますので、この後のディスカッションでもぜひいろいろな意見を聞かせてください。


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