ひらかれた対話の旅Vol.3
「主体性を育む優しい空間」そとまこプレーパーク(札幌)
写真:yixtape
アートや教育、子どもをめぐる場所を訪ね、声を聴き、想いを交わす。
「ひらかれた対話の旅」は、その一つひとつの出会いを記録し、
“人が学び、育ちあう場”の姿を見つめ直す、小さな旅の連続です。
助成:札幌市(2025年度 札幌市文化芸術創造活動支援事業)
屋外で遊びながらアートや工作体験ができる「そとまこプレーパーク(真駒内公園さけ科学館前広場)」。子どもたちの感性が開く瞬間に立ち会う喜びに魅せられたというプレーリーダーの「しのさん」こと北村志乃さんと「まめちゃん」こと遠藤京子さんにお話を伺いました。
※プレーパーク(冒険遊び場)とは?
プレーパークは、誰でも遊べる野外の遊び場のことです。子どもが自由に遊べる環境を整えたり、遊び場全体をコーディネートしたりする「プレーリーダー」がいる点が特徴です。札幌市では、子どもの自主性や創造性、協調性を育むことを目的に、子どもが「自分の責任で自由に遊ぶ」ことのできる場としてプレーパーク事業が推進されており、円山公園や西岡公園をはじめ、市内14カ所で多種多様なプレーパークが開催されています。プレーパークは、地域の方々が主体的に開催・運営を行っています(※)。
参考:「プレーパークさっぽろ(公益財団法人札幌市公園緑化協会)」公式サイト
https://www.sapporo-park.or.jp/playpark/
▲10月初旬に開催されたプレーパークにお邪魔した時の様子。ふかふかの落ち葉や木の枝はそれだけで素晴らしい遊び道具になります。
「そとまこプレーパーク」は今年5月からスタートし、すでに月に100人もの方々が参加されているそうですね。まずはどのような経緯で始まったのか教えていただけますか
もともと「子どもの体験活動の場Coミドリ」にあるプレーパークで働いていましたが、今期から運営が変わることになり、せっかくならこの活動を残そうと思ったことがきっかけです。
Coミドリは公共施設なので、数年ごとに入札によって運営事業者が変わります。Coミドリでのプレーパークの取り組み自体は今も存続されていますが、運営者が変わると活動内容や場の雰囲気が変わります。私たちが3年前から作ってきたこの活動、そしてここで知り合ったメンバー同士のネットワーク、さらにこの雰囲気が好きで通ってくれていた方々とのつながりを、これからもこの地域で続けていきたいと「そとまこプレーパーク」の活動を新たに立ち上げることにしました。
真駒内駅前は再開発が予定されていて、今後駅前の環境ががらりと変わる予定です。未来の真駒内にも、子どもたちの居場所はしっかりと残していきたいということも活動のベースにあります。
真駒内公園では、以前子育てサロンが開催されていて私も通っていました。木にハンモックをつけたり、フラフープのブランコがあったり、手作りおやつを楽しんだり。そこの雰囲気がとても自由で思い出深くて。今思い返すと、プレーパークのようでした。親として育ててもらった真駒内公園で、地域の子どもたちがのびのびと遊ぶサポートができたら良いなと思っています。さけ科学館前広場というのは真駒内公園側からの提案です。
お互いがCoミドリで出会うことになって知ったことですが、当時私も同じ子育てサロンに通っていました。同じ場の思い出を共有していることが、今一緒にプレーパークをやっている上での親和性にもつながっていると思います。
振り返ると、私自身の子育て方法がプレーパークのようでした。上の子が幼稚園に入る前は、毎日朝9時に家を出て、夜6時まで遊んで帰宅するという、まるでサラリーマンが公園に出勤するかのような生活を送っていました。
昼食やおやつ、遊び道具も持って行き、昼寝も公園で。
そのうち他の親子も「一緒に遊びたい」と集まるようになって公園仲間ができました。遊び道具を提供したり、喧嘩を仲裁したりというのは日常茶飯事で、プレーパークの活動が始まる前からそういうことをやっていたんですね。
その後、人から誘われてプレーリーダー研修を受け、いろいろなプレーパークに派遣されるようになりました。Coミドリでは、遠藤さんをはじめ素敵なメンバーに恵まれ、みんなが子どもの声を聞くことができて、安心して協力し合える関係性ができていました。そういう場所が変わらずにあり続けることが大切だと思います。
▲手作りの遊び道具も用意され、遊びをコーディネートしてくれるプレーリーダーもいます。
外遊びが中心のプレーパークが多い中で、アートや工作の活動も充実している点が「そとまこプレーパーク」の大きな魅力です。活動の内容や工夫されている点について教えて下さい
元々幼稚園で働いていたこともあり、自分自身も工作が好きで。
一番得意なのは、新聞紙で弓矢を作ることです!
プレーパークは「自由にどうぞ」というのが基本にありますが、自由過ぎると何をして良いのかわからない。
最初に子どもの様子を見て、自分からやり出す場合はそっと見守ります。戸惑っている子どもには、先に仕掛けていきます。「こういうのもできるよ」とほんの少し見せるだけで「こんなことして良いのか」とアイデアが開いていきます。段ボールに絵を描いたり、新聞紙をまるめてみたり。そうしてやり始めると、他の子どもたちも見に来て広がっていきます。
真駒内公園の施設担当の方も積極的で、この間は木の枝でティピーテントを作ったりしていました。遊び心のある大人の方がいると、どんどん盛り上がります。自然のものを使うと、季節によって変化を楽しめる点も良いですよね。雪が降った時は、子どもたちはコップに入れた雪に色水をたらして、お茶会ごっこを楽しんでいました。
▲この日は拾って来た松ぼっくりや木の実を使った工作や木工などが体験できました。
遠藤さんの工作が素晴らしいので、彼女がいる時はおまかせです。私がアート活動を担当する時は、絵の具をたくさん使わせたり巨大彫刻(段ボールや雪)を作ったりと、ダイナミックに広げていくことが多いですね。
プレーパークでは、子どもたちの体験機会やその中身の幅を広げてあげたいという気持ちが大きいです。絵の具も「もっと使いなさい」とよく言います(笑)。大きな段ボールに子どもたちが絵の具で手形をつけながら遊んでいた時に、その子のお母さんから「どうしても持ち帰りたい」と言われ、小さくカットしてお渡ししたら「職場に飾ります」と喜んでいただいたことがあります。アート活動が本人だけでなく周りの方々の癒しの体験にも繋がっていると感じました。
プレーパークでやりがいを感じる場面はどんな時ですか?またお二人が考える活動の課題について教えて下さい
子どもたちが自分で考えて遊びを作っていたり、初めて会った子ども同士が一緒に遊び始めたりした時ですね。子どもたちが当たり前に持っている力を目の当たりにするとすごく感動しますし、この活動をやっていて良かったと心から思います。
課題としては周知がなかなかうまく行かないことでしょうか。この活動に関心を寄せて下さる方が増えてきたのですが、会場との兼ね合いもあり、直前になってようやく活動日のお知らせを出す、というのが現状です。リピーターになって下さった方々にしっかりと情報をお伝えしていきたいです。
また、通りがかった方々には集団で活動しているサークルのように認識されることが多く、「誰でも参加して良い」ということが見た目で伝わりにくい点をどうにかできないかなとも思います。
子どもたちを見るのがとにかく面白い、これにつきます。
ある時、子どもが二人でバケツに入れた水を運んでは流す、ということをやっていました。夕方だったので「そろそろおしまいかな」と言ったら「もう仕事はやめようよ。全然遊んでないから遊ぼう」と。今までの遊びは何だったんだと思いましたね(笑)。そんなエピソードばかりです。
自分の子育てのフェーズが変わっていく中で、幅広い年代の子どもたちのそれぞれの時代、そして彼らの変化もずっと見ていけるということがやりがいです。本当に良いものを見させてもらっています。
周知に加えて、継続性も課題だと感じています。どんな人も受け入れられるような居心地の良さであり続けたいです。遊びのことで悩んだり議論したりできるというのは本当にありがたいことです。こういった幸せな活動を通して、地域の安心安全に貢献したいですし、悩みを抱えている方がふと相談できる存在でありたいとも思いますね。と、突き詰めるとすごく真面目な話になりますが、実際は楽しく遊べる優しい空間が広がってくれたら良いので、それが通りすがりの方々にうまく伝わると良いのですが。
誰一人取り残さない社会へ向けた実践の場でもあるということですね
▲北村さんと遠藤さん、そしてお手伝いに来られたプレーリーダーも含めた、この日の「そとまこプレーパーク」のスタッフの皆さん
10月にそとまこプレーパークにお邪魔しましたが、子どもはもちろん、そこに関わる大人の方々にとっても心地よい空間が広がっていると感じました。ボランティアでお手伝いされている方々にとっても居場所のような存在なのではないでしょうか。
その通りで、年齢や障がいの有無に関わらず誰が来ても良い場所ですし、誰もが役割を担うことができる場所でもあります。
派遣されてくるプレーリーダーさんに加えて地元のスタッフが多い点がそとまこプレーパークの特徴の一つです。札幌市内のプレーパーク事業は、市の公園緑化協会が取りまとめていて、HPなどでプレーパークの開催情報が公開されているので、ふらりと遊びに来て下さる方々も多いです。プレーリーダー研修で一緒だった方や年度末の報告会などで顔を合わせる方とは自然と知り合いになり、情報交換したりしています。中には、木工が得意な方や簡単な科学実験を提供して下さる方もいて、おかげで幅広い年代の子どもたちへアプローチができます。
「こうでなくてはいけない」という世界が「これでも良い」という世界に変わると、大人も子どもも救われますよね。開放感のある屋外での活動という点も素晴らしいですね。今回お二人のお話を聞いていて、何かを与えたり教えたりすることではなく、環境を整えてあげることこそが大人の仕事だということを再確認しました。それをプレーパークは実践されているのですね。ありがとうございました。



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