教育者 Meets アーティスト「秋元 さなえ×川田 由紀」(第2話)作品をつくること。併せて自分自身をつくること。

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教育者 Meets アーティスト 「秋元 さなえ×川田 由紀」第2話

作品をつくること。併せて自分自身をつくること。

教材開発や探求学習を支援する助成プログラム】に採択された訪問保育ひかりの保育士・川田由紀さんが、教材開発にあたって何組かのアーティストと出会い、対話を重ねていく行程を可視化する、という企画が生まれました。

その名も「教育者 meets アーティスト」

今回のお相手は秋元さなえさん。
土地や風景と自分を重ね合わせることで、少しずつ浮き上がってくる「なにか」を拾い上げ、その道程そのものを作品として落とし込むアーティストです。
江別の商店街の一角で、美術アトリエ「とりむしさかな」を構えており、3歳から小学6年生を対象とした絵画造形教室をひらかれています。
今回は、その「とりむしさかな 大きいアトリエ」にお邪魔して、対談させていただきました。

森嶋 拓
進行

川田さんは前回、制限とか枠の話になったときに、その枠のギリギリを攻めていくっていう話をされていたと思うんですけど、いまお話を聞いてみて、いかがでしたか?

川田 由紀
保育士

そうですね、今のお話を聞いて、また未知のワールドに入ったなと思って。

作品というものは、モノが出来上がるっていうイメージだったんですけど。
行動そのものが作品になって、場所でアクションとか、うーん、なんて言ってよいのかわからないんですけれども、すごい・・・なんでしょうね、また未知の世界すぎて、ワクワクしています。

森嶋 拓
進行

そうですよね。

川田 由紀
保育士

評価にもとらわれず、コツコツやりたいことを、純粋に自分が作りたいことをやり続けていて。
作品を売りたいわけでもない、評価をされたいわけでもない。
逆に作品を売りたくない、手放したくないって・・・

「活動を続けるために続けてきたら、こういう形になりました」っていうのが、私にとっては本当に未知の世界で、すごいなぁと思っています。

秋元 さなえ
アーティスト

あははは(笑)。

川田 由紀
保育士

自分が大切にしてることを、当たり前に大切にされてる方だなと思って。

それって、生きづらいこともあると思うんですよね。
でも、ブレないっていうのは、本当にすごいなと思っています。

秋元 さなえ
アーティスト

アート界隈の中では、私は少しハグレものというか。
既存のアートシーンを活用する気もないし、作家同士で交流して繋がりをつくって、みたいなこともする必要がないから、あまりしないし。

普段の生活では、ある程度うまく馴染んでやっていると思うんですけど。
作品に関しては、譲りたくないことは絶対にやらない、みたいなところがあって。
そこは徹底していると思うんですよね。

森嶋 拓
進行

それって聖域というと、またちょっとニュアンスが違うのかもしれないけど…
でも、確かに自分の立ち位置とか、生き方がブレていないですよね。

ちなみにこの場(=教室)では、どういうことが行われているんですか?

秋元 さなえ
アーティスト

ここは幼稚園児から小学生と、あと本当は小学校までしかクラス設定していないんですけど、卒業しても辞めなかった中二の子もいて、全部で40人ぐらい通っているのかな。
一応、絵画造形教室という括りです。

私が講師になって、子どもたちに描くことと、作ることと。
あと、造形遊びみたいなことのなかで、なるべく本人たちの発達に合った技術的なことを教えながら、創作活動を一緒にしています。
子どもが「自分を解放する場所」として捉えてもらえるような仕組みで運営しています。

(作品を)作りたくない日は作らないで、奥の部屋にいるだけ、ということもあります。
あとは「どういうものができても、受け入れてもらえる」みたいな場ですかね。

森嶋 拓
進行

なるほど。

秋元 さなえ
アーティスト

「いろんなことができるようになりたい」「技術を高めていきたい」という子がいる一方で、粘土こねこねしてるだけで楽しいとか、いろんなペンが揃ってるだけで楽しいとか、そういうことで満足する子もいて。

そこに対して、私がいいとか悪いとかは特に言わないです。
そういう場所です。

川田 由紀
保育士

すごく、私が思い描いていたことに、近い雰囲気だなと思って。
私もなんですよね。
保育の中で評価はしないですし、異年齢になったりすることもありますし。

「心の家庭教師」って言っていただいたことがあって。
それは、保育の中でお父さん、お母さんから言われたんですけどね。
気持ちが解放されるとか、楽になったとか言われたり。

ベビーシッターって、「用事があるから頼みたい」というイメージだと思うんですけど、「ただ遊びに来る」っていう用途の方もいるんですよね。
今回応募したのは、いつもそうやってご家庭単位でやっていることを、もっと大人数というか、枠を広げるような形でできたらいいな、っていう想いがあったので。

森嶋 拓
進行

そうなんですね。

川田 由紀
保育士

いろんな年齢の、いろんな発達の子がいて、その中でその子が「やりたいことを、やりたいようにできるの」っていいな、と思って。

さっき秋元さんが言っていた、「作品を作らないで、奥の部屋にいても良いよ」っていうことなんですけど、そういう気分が乗らない日って人間だからきっとあると思うんですよね。
それでも来たいって言うのが、良いですよね。

秋元 さなえ
アーティスト

「帰る?」って聞いたら「帰らない」って言うから、「じゃあいいよ、ここにいなよ」って伝えて。
お家の人には、その日の分のお代はいただきませんので、また来てくださいねって送り出す。
その日は、作品を作っていないからね。

川田 由紀
保育士

”安心する場所”なんだなって。
秋元さんの存在も含めて。

秋元さんが、そういう存在なんだな、と思って。
ちょっと、早くもウルっときそうな感じです。
私、すぐにウルッときちゃうんですよね。

秋元 さなえ
アーティスト

多分ですけど、(わたしが)あんまり先生っぽくないのかもしれない。

森嶋 拓
進行

でも、教育大で学ばれたことっていうことが、いまの活動に影響が大きかったりするんですかね?
こういう教室をやろうと思ったこともふくめて。

秋元 さなえ
アーティスト

そうですね、教員免許は、絵画教室で働く為に取得しました。
教育大ですごくお世話になった先生に、ワークショップのお手伝いを何度かさせてもらっていたんですけど。
その時に、わたしのもとに子どもたちがほっといてもバーって集まってきて、もみくちゃにされるみたいなことが結構あって。
教える技術はともかく、わたしって子どもには、なぜか分からないけど好かれるのかも、と思って(笑)

その頃は就職難だった背景もあって、「それなら、就職は別にしなくていいな」と、就職活動はしていなかったんですけど。
じゃあ、絵画教室を目指してみようかなと思って。
そこから留年して教職科目を取り始めて、という流れがありました。

森嶋 拓
進行

なるほど、大学時代に先生と一緒に子どもの輪の中に入っていく、みたいな経験ができたことが、今につながっているんですね。
そういう意味でも、大学に入ってよかったというか。

秋元 さなえ
アーティスト

ここの場所も、自分自身の制作と直接つながっているいうことはないんですけど、でも、子どもたちも私が作っている人だからこそ、お互いの言ってることが分かり合えたりとか。
そういう部分もあるし、いい関係を築けているんじゃないかなぁ、と思いますね。

川田 由紀
保育士

うんうん、そうですね。
上下関係がないから、安心して子供たちもいられるんでしょうね。

安心できる人って、喋らなくても子供ってワーって集まってくるじゃないですか。
そういうことを話を聞きながら思っていました。

しかも生徒さんが、40人もいらっしゃるというのがすごいですよね。

秋元 さなえ
アーティスト

40人、いっぺんに相手しているわけじゃないですよ?(笑)
でも、この辺だけじゃなく、けっこう遠くからも通ってくれていますね。

森嶋 拓
進行

教室や、ワークショップのなかで気をつけていることってありますか?

秋元 さなえ
アーティスト

特にないかもしれないですね。
もちろん、安全管理的なことは気をつけていますけど。

うーん、あとは……
あっ、「うまいね!」とか「いいね!」って言わないとか?

「これ、できたよ!すごいでしょ!」って子どもたちに言われたら、「それがいいねって考えたことが、いいね!」と返したりとか。
あとは、他の人とは比べたりとかしないで、本人の成長の中の「少し前に比べて、今はどうなったか」と、過去の自分と比べるように、とかは気をつけていますかね。

森嶋 拓
進行

それは、あまり作品の評価をしない、みたいなことでもあるんですかね?

秋元 さなえ
アーティスト

あると思いますね。
あとは、基本的にわたしが事前に試作をしてみて、そこで自分が面白くないと思ったことはやらないです。

それと、発達以上のことをさせない。
みんなで一緒にやるときは、ちょっと背伸びさせてみる、っていうことはあるんですけど。

明らかに、なんていうんですかね。
まだその段階に達していないのに、すごく写実的なことをしたいとか、これ絶対に怪我するってわかってるのに、すごく危ない道具を使いたいとかってなった時は、私が手伝って一緒にやるか、もしくは「もう1年待って」って言うか。

川田 由紀
保育士

私は、「いいね」って結構気安く言っちゃうなと思っています。大人に対しても、子供に対しても。

だけど、その比較をしないっていうことは、私も気をつけていて。
こっちの子を褒めたら、あっちの子も絶対にいいところを見つけるっていうか。
「あの人は褒められていたけど、私は……」って思われないように、意識はしています。

あと怪我も気をつけていて、ギリギリのラインを攻めても、安全対策はしっかりするっていうか。
公立の保育士をしてたので、安全面ではすごくしっかりと指導は受けて育ってきてるんですよね。

だけど、やっぱり「ここまではいいかな?」とか。
木登りとかも、「私が補助すれば、ここまでなら登れるかな?」とかって。

最初から何でもダメとはしないで、できるだけ挑戦させたい気持ちはすごくあります。
でも、やっぱり何か起きてしまうと、木登り自体ができなくなってしまうから。
配慮はかなりしていると思います。

秋元 さなえ
アーティスト

「おとどけアート」のときは、そういった自分の中の「安全管理意識」がすごく邪魔になりました。
コーディネーターの方からも「そこまで先回りして考えなくてもいいんじゃない」と言われたし。

この教室だと、私と保護者と子どもの三角形の関係性になるので、やっぱりどこか(怪我とか事故に対する)責任がすごく強くて、安全対策をいろいろと考えたくなるんですけど。

でも、おとどけアートはもうちょっと大きい輪があるから(小学校とかコーディネーターとか)
「自分ひとりで、そこまで考えすぎなくてもいいんじゃない?そのせいでつまらなくなることが、すごくたくさんあるから。」
「自分のやりたいことだけを、もっと考えてみたら?」って言われて。

「大事だな、それ」って。改まる、みたいなことがありましたね。

川田 由紀
保育士

すごい配慮されてたんですね。
周りの方にも、そうやって。

秋元 さなえ
アーティスト

気になっちゃうんですよね。
「やっぱり、危ないかも」とか、いろんなことが予測できるので。

自分ひとりで制作しているときは、「怪我したって問題ない!」というぐらいの気持ちで。
わりと作品のためだったら、なんだってする方なんですよ(笑)

でも、子どもとの関りになると、途端になんか私ってつまんなくなるな、ということを最近思ったりします。
だから、もうちょっとうまいことバランスをとって、面白くやれないかな、と思ったりもして。

ちょっとこれは悩みですね、最近の悩み。

森嶋 拓
進行

(子どもたちと)関り続けてきたからこその悩みというか。

秋元 さなえ
アーティスト

そう、なんか多分、先回りすることに慣れてきちゃったんでしょうね。
でもべつに、それを子どもが望んでるかっていうと、そうじゃなかったりするじゃないですか。

川田 由紀
保育士

うんうん、そうなんですよね。

森嶋 拓
進行

話が変わりますが、作品って、作るのは簡単ですか?ご自身にとって

秋元 さなえ
アーティスト

いや、1個作るのに、1年以上はかけます。

森嶋 拓
進行

作品づくりのプロセスって、何から始まるんですか?

例えば、興味とか?

秋元 さなえ
アーティスト

なんでしょうね、悩み事とか?
例えばですけど、仕事とかなんでもいいですけど、最近うまくいかない、滞っているみたいな感覚が混ざってくると。
今まで行った場所とか、そのときに行きたい場所とか、そういう自分の今持っている感情に心を寄せる風景にたまたま出会ったり、思い浮かべたりするんですよ。

そうしたら、そこに通い続けるんです。
で、そこから今の自分のメンタルをもうちょっと良い方に持っていくのと、併せて制作も進めていくみたいな感じです。

森嶋 拓
進行

なんかその……いやなんかすごいやっぱり、身体感覚があるなと思って……
まず、その自分の気持ちや感覚を、きちんとキャッチするところから始めないといけないですよね。

違和感とか悩みとかも、「これは何なのか」ってことを考えるっていうか、その違和感をほっとかないというか。
そう、放置しない。

秋元 さなえ
アーティスト

インタビューの記事に載せていいのかわからない言い方をすると(笑)、今見えている景色で生きていくのが嫌になっちゃうんですよね。
この景色では生きられない、この現実じゃ無理だってなっちゃう。

そうなると、日常生活が阻害されるぐらい、それでいっぱいになっちゃうから、しょうがないから制作を始める。

森嶋 拓
進行

その景色を変えるために?
なんというかセラピー的な要素も……

秋元 さなえ
アーティスト

そうですね、半分そんな感じも入っていると思います。

例えばですけど、この作品だったら三日月湖にすごく引き寄せられて。
何回も三日月湖に行くんですよね。

それで、最初は自分のイメージが惹き合って始まったことのはずなんだけど、実際にその場所に行ってみると、その周辺の三日月湖の真ん中の島になっているところは、すごい豊かな農地だったりして。
街中にはいない虫が飛んでいたり、排水路で引き込まれた水の音がずっとしていたりとか、なんだか思っていた感じと違うんですよね。
その「思っていたところと違う」っていうところで、なんかまたこう、自分の意識が変換されるっていうか。

そこにこう、ちょっとした希望を見出すっていうか、そこからもっとなんか作品が深まっていって、最初の思っていたものと違うものができる、みたいな。
そこでちょっと結実するっていうか、じゃあ発表できるなみたいな、そういうタイミングになるんですよね。

森嶋 拓
進行

へぇぇ。

秋元 さなえ
アーティスト

だから、作品を作るんだけど、併せて「自分を作る」みたいな、そういうことがすごく楽しくて。
セラピーって言ったらそうなのかもしれないですけど。

でも、展示を見に来る人も、作品の技術とか、どんな形が出来上がったかを見に来るというよりかは、この冊子に載っているような、「どういう過程を踏んで、前回からどんな風に変わったの?」みたいなことを聞かれます。
そういうお客さんが結構いて。

森嶋 拓
進行

すごい!ちょっとお客さんも(鑑賞の)玄人というか……(笑)、常連の……

秋元 さなえ
アーティスト

そうそう!
「どこに行って、どう変わった?」みたいな、そういうお客さんが多いです(笑)

森嶋 拓
進行

(それはもはや)お客なんですかね(笑)

秋元 さなえ
アーティスト

そうそう(笑)。
別に友達とかじゃないんです、その展示のためだけに来てくれるので。
その時だけ、何年かに一回会うっていう関係性です。

森嶋 拓
進行

あはは、それはすごいですね(笑)

秋元 さなえ
アーティスト

三日月湖とか、作品に登場するそれぞれの場所を訪れてくれたお客さんもいるんですよ。
でも、その人が見て知っている場所なんだけど、この作品のなかの世界だとそうじゃない、みたいな。
そういうギャップも面白いみたいで。
「これって、ほんとにあそこのことですか?」って言われたりとか。

やっていることは、別にそんなに壮大なことじゃなかったりするんですよね。

なので、作品は売れないでしょ?
なんて言っていいか分からないけど、私の作品は売りようがないんです(笑)

森嶋 拓
進行

いや、でも、そういう常連客がいるんだったら、もうすでにつながっているので、なんかすごい、もはや文化だなって思いました。

「高校野球おじさん」みたいな、自分の出身校でもないのに高校野球を見続けて、応援し続けているおじさんとか、たまにいて。
なんかそういう、オーディエンスとつながって文化を作っていくみたいな印象で。

舞台芸術なんかも、まさに、そうなんですけど、本当、観客と……
観客がいて初めて作品って成立するものなので、そこで観客との対話がないと、ただ舞台上で現象が起きているだけっていうか、動いてるだけってなっちゃうので。
相互関係があってこそ、文化になっていく、みたいな。

秋元 さなえ
アーティスト

作品を見せると、見た方がそうやっていろいろ言ってくれて、尾ひれがつくじゃないですか。

そしたらまた続きがいつか作れる。
そういうのが、続いていくんですよね。

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