教育者 Meets アーティスト「秋元 さなえ×川田 由紀」(第3話)つくりながら、動かしながら、何かが生まれていくということ。

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教育者 Meets アーティスト 「秋元 さなえ×川田 由紀」第3話

つくりながら、動かしながら、何かが生まれていくということ。

教材開発や探求学習を支援する助成プログラム】に採択された訪問保育ひかりの保育士・川田由紀さんが、教材開発にあたって何組かのアーティストと出会い、対話を重ねていく行程を可視化する、という企画が生まれました。

その名も「教育者 meets アーティスト」

今回のお相手は秋元さなえさん。
土地や風景と自分を重ね合わせることで、少しずつ浮き上がってくる「なにか」を拾い上げ、その道程そのものを作品として落とし込むアーティストです。
江別の商店街の一角で、美術アトリエ「とりむしさかな」を構えており、3歳から小学6年生を対象とした絵画造形教室をひらかれています。
今回は、その「とりむしさかな 大きいアトリエ」にお邪魔して、対談させていただきました。

助成:札幌市(2025年度 札幌市文化芸術創造活動支援事業)

森嶋 拓
進行

作品が完成しないことってあるんですか?

秋元 さなえ
アーティスト

完成しないことですか?……そうですね。
大きな括りで考えると、全部まだ終わっていないというか、全ての作品がずっと続いていて、いつ変化してもいい、という状況です。

この作品も今度、16年ぶりに作るんですよ、続きを。
1月に発表があって。

川田 由紀
保育士

終わらない……へぇ、終わらない……
なんだか、初めて知ることばかりで(笑)

前回もそうだったんですけど、話題についていくだけで精一杯な感じになっています(笑)

秋元 さなえ
アーティスト

あはは、そんなに……そんなに違う人間なのかしら。

森嶋 拓
進行

いや、でも、やろうとしていることは、そう遠からずな感じもある気がします。

秋元 さなえ
アーティスト

もしかすると、(この教材開発も)自分で作らなきゃ!と思うと辛いかもしれないですね。
私は教材を用意するとき、いちおう一連の流れを自分でやってみて、考えたりはするんだけど。

実際の教材はその全部を用意していなくて、半分しか用意していなかったり。
あとは子どもにやってもらう。
そうやって、教材未満のものを教材にしてもらって、どんどん発展させていくみたいなことも、けっこう多いかもです。

どのみち子どもたちって、「これも出していい?」とか「これも使いたい」と意見がどんどん出てくるから、最初から一人でやらない方がいいかもとは思いました。
ひとりで、そんなに頑張らなくてもいいんじゃないのかな。

川田 由紀
保育士

そうですね、たぶん頑張らないでいきます。
コーディネーターやアーティストの方もいるんで、わたし一人ではなく。

なんでしょうね、なんかゴールが、子どもがワクワクすることができたらいいな、って。

秋元 さなえ
アーティスト

ゴールですか?

川田 由紀
保育士

えっ?あ、はい、そうですね。

秋元 さなえ
アーティスト

ゴールは、べつに無くてもよくないですか?
それより、なんていうか、いまこの時間みたく驚かされたくないですか?子どもに。

川田 由紀
保育士

ええっ?どういうことでしょうか?

森嶋 拓
進行

そういう驚かされたエピソードとかってあるのでしょうか?

秋元 さなえ
アーティスト

そうですね、レッスンが終わった子は、自分の好きなことをやっていいよ、という時間を設けているんですけど。

あるとき、私自身の制作として、壁に自分の絵を貼っていたんですよね。
そしたら、その絵に登場するなにか「小さいもの」を子どもが作り始めていて。
そこでお話がはじまり、私がそのお話のエピソードを受け取って、自分の制作にそれを投げ返して、ということが始まったりとか。

森嶋 拓
進行

お互いに影響を与え合ったというか……

秋元 さなえ
アーティスト

そうそう、交流ですよね。
作品を通しての交流が生まれたっていうか。
そういう、つくったことで、なにかが始まって、ということは結構多いかもしれないですよね。

来月やろうと置いておいた材料や道具を見て、まだ教えていないのに子どもが全部自分でやりだしちゃったり。
「前に作ったあの作品持ってきて」って言われて出したら、今回の作品を組み合わせて、なにか新しいものを作り出すとか。

こちらで用意したものって、あんまり意味なくないか?ということは結構ありますね。

森嶋 拓
進行

なるほど。

秋元 さなえ
アーティスト

でも、教室を始めてすぐのときに「いや、今日はこれを用意してきたから、これをやりなよ」って、一回だけ言っちゃったことあったんですよ。
そうしたら、あんまりお互いに良い結果にならなくて、その子はなんか萎縮するようになっちゃったんです。
何ヶ月間か、「あんまり好き勝手しないようにしとこう」みたいに、ちょっと大人しくなっちゃったっていうか。

私は私で、子どもに「ダメ」とかって言いたくなくてこの教室を始めているのに、ダメって言っちゃったことを1年くらい引きずっちゃって……自分自身も傷つけちゃったんですね。
だから、そういうことは流れに任せる方が良いというか、用意しすぎない方がいいんだなと思って、それからちょっとやり方を変えましたね。

なにが起こるかわからない方がいいのかな、と。

森嶋 拓
進行

用意しないとか、空白や余白をつくること。ゴールをつくらないこと。
そういう感覚って、アート業界では大切にされていることだと思うんですけど、社会ではまだまだそれができないケースもありますよね。

川田 由紀
保育士

保育の時って、私も「透明な人」でいくんですよ。
わたしの概念とか、いろいろを持ちこんで保育をしたくないので。

クラス担任として、子どもたちの前に立つときは、スーッと。
家を出る前に家族となにかあったとしても、教室に入ったらもう何があろうが、スイッチが入るんですよ。
だから、その状態だとアーティストの方とは割と近い状態なのかもですが。

でも、私が団体みたいな活動もやっているから、そっちの時は「この事業はどうやったらうまくいんだろう」って。
せっかくこんな機会をいただいているのに、それを自分だけのものにするのはもったいない、関わったり興味を持ってくれる人を増やしたいという欲はでるんですよね。

森嶋 拓
進行

専門家の顔と、事業主の顔をお持ちになっているというのは、珍しいというか……おもしろいですよね。

いや、しかし確かに保育士さんって、小学校の先生とかよりもアーティストに近いというか。
みんなで同じように勉強をしなきゃいけない小学校と違って、保育園って自由だし、先生方の声掛けとかもすごく考えられていますし、イレギュラーへの対応力もすごいですよね。
何気ない対応のなかにもクリエティブなやりとりがあったりして。

ところで、秋元さんは活動を通して……なんて言ったらいいんだろう?子どもたちに伝えたいものというか、受け取ってほしいみたいなものもありますか?
なんというか、この場所を通して、でも良いですし。

秋元 さなえ
アーティスト

うーん、なんでしょう。
ここでの活動を、なんていうんだろうな、美術作品を作るっていう範囲内だけのことじゃなくて。
もうちょっとなんか、自分が生きていくときのコツみたいなものに繋げていってくれたらいいなぁとは思っています。

森嶋 拓
進行

うーん、なるほど。

秋元 さなえ
アーティスト

作品作りを通して、自分を解放させるということもそうだし。
初めての素材に出会った時に、それをどうやって活かしていくんだろう、っていう試行錯誤もそうだし。
分からないことがあった時に、一人で解決するのか、他の人と関わりながらやるのか。
大人に手助けを求めるのか、やっぱり諦めるのか、そういう選択肢もそうだし。

なんというか、いろんなことが、手の中で形を作ることの範囲だけじゃないことにもつながっていたりすると思うから。
大人になっても、そういうことの一部にどこかつながっていたらいいなぁとは思います。

森嶋 拓
進行

そうですよねぇ。

秋元 さなえ
アーティスト

わたしは、いま月に2回ほど福祉施設に通って、身体に障がいがある人たちと一緒に「芸術教室」という創作活動をしているんです。
そっちは子ども相手じゃなくて、10代から80代の方、30人ぐらいと一斉に向き合っています。

そこでも、どんな人にもアートは開かれているということを(最終的な)狙いとして、その過程のなかで、支援者がどうそこに寄り添っていくかというやり方をしていて。
スタート時点では、特定の誰かに向けてわざわざ設定はしないみたいな。
教材とか材料の提案をするのはわたしなんですけど、(最初からつくりすぎない、決めすぎないという意味で)わりとここでやっていることと近いことを提案するんですね。

川田 由紀
保育士

へぇ~、うんうん。

秋元 さなえ
アーティスト

一応打ち合わせの段階では「あの人は、手足ではなく顎を動かして作るけど、この教材や材料でできますか」って聞くんです。
そしたら福祉施設の担当の方も「なんとかやれるから大丈夫。困っていたらサポートできます」
と毎回言ってくれて。

個人の関わりのレベルのところで、「その人がどうやってそれを叶えられるか」っていうことを、支援していく。
最初からあんまり「みんなができることをやってください」とは、言われたことがないかもな、とか思って。

森嶋 拓
進行

やりながら成立に向かっていくというか。

秋元 さなえ
アーティスト

それってなんていうんですかね、一般的な……支援の仕方じゃないかもしれないんですけど。

でも、その人の、なんていうんですかね?
何かを冒険したいとか、叶えてみたいとか。そういう本人の中の気持ちを高めるためには、それをちょっとハンディがあるところからあえて始めるみたいなのとかもいいのかな?って今日のお話を聞いていて思ったんですけど。

「これはもう、その人の世界のことだから」
「その人自身がやり遂げることだから」
みたいな。

まあ、これはその保育などの現場でどれくらいサポートがあるか、にもよるとは思うんですけど。

川田 由紀
保育士

うんうん、そうですね。

秋元 さなえ
アーティスト

ここの利用者の方からは、芸術教室を開設したばかりの頃は、

「作品を作るって何ですか」とか
「芸術って何ですか」とか
「何をしたらいいんですか」みたいに、スタッフの方よりも本人たちから聞かれることがありました。

そういうときは、「うまくものを作れたとかよりも、『これがしたい』って思えることが大事ですからね。なにをしたいですか?」って答えたりして。
すごい、それがなんかやっぱアートの本質なのかな、とか思いながら関わり続けていますね。

川田 由紀
保育士

なんか、できるかどうかわかんないんですけど……本当に、なんていうのかな。
少数派がわたし、気になっちゃうんですよね。
自分が双子親だったっていうのも、あるかもしれないんですけど。

もともと、わりと自由な子で、先生にいっぱい怒られてきた子だったっていうのもあるかもなんですが。
尖ったことすると叩かれる、いろんな意味で……っていうイメージがあるので。
でも、尖ったこととか、少数派な人が……アートだと表現できる場所があったりとか。

なんか、わからないんですけど、除外をしたくない!っていうのがあるんですよね、私の中で。
かといって、その……なんていうのかな、(少数派の子たちだけを集めて)「こういう子たちとやっています」っていうのもちょっと違うというか。
いろんな人が行き来できるっていうのが大切で。

たぶん、なんだろうな、保育もやって、療育にも関わって、私はその経験がある。
でも、アートの方は、もう本当に保育園の先生の制作レベルしか私はできないから、そこの力が借りたいなっていうのが、原点に戻ってますけど、そこはぶれないなぁと思いました。

それに共感してくれる人が集まってくれたらいいなぁ、みたいな感じですね。

森嶋 拓
進行

やっぱり場作りっていうのは、(教材開発の)ひとつ可能性として、あるのかもしれないですね。

では、今日の感想を最後にお二人にお聞きしたいのですが、よろしいでしょうか。

秋元 さなえ
アーティスト

感想?感想……うーん。

自分はここに来ていない時は、放課後児童クラブで働いてる面もあり、そこでは保育業なので、なんかこう、「わかるー!」っていうところもありました、やっぱり。

でも私自身は、ここで創作活動をしている時と、学童で保育している時の自己矛盾がすごいから、やっぱり川田さんのように、チャンネルを変えなきゃと思うことがありますね。

川田さんは、保育中と、経営者というか運営者としての環境や立場で、チャンネルが大きく変わると思うんですけど。
川田さんが、どのチャンネルを使って教材開発をやっていくことになるのかなぁ、と興味深く考えていますね。

川田 由紀
保育士

秋元さんは、すごい「生き方の優先順位」がはっきりされてるなぁと思って、そこがすごいカッコいいと思って。
それがすごい大事なことだなぁと思ったし、私もこれがやりたいっていうか、純度を高めたいな、と思いました。
今日はそれが一番すごくあったかも、「純度を高める」っていうことをすごく思ったんですよね。

あとは、なんだろうなぁ。
「楽しかったらそれでいいじゃん」みたいなところも、自分にはあるんですけど、その割合がちょっと減っていたかもな、っていうのがあって。

壁を作られるのを覚悟でいうと、実績を作りたいっていう野心的なところもありますし(笑)

秋元 さなえ
アーティスト

(笑)。
いやでも、そういうのも大事ですよね。

川田 由紀
保育士

大きな括りでみると、「子どもが、(他者に・大人に)評価されない社会」という、私はそれがいいと思ってるので、評価とは違うやり方で「そんなやり方があるの!?」ってびっくりする大人が増えたらいいと思ってるんですね。

なので、(一般的な保育士とは違うやり方として)訪問保育をやっていますし、保育や活動の純度も高くしていきたいし、単純に楽しいこともやりたいし。
夢中になって本当に……いろんなことを忘れるぐらい夢中になるのも好きだけど、なんていうのかな、野心ギラギラでいきますっていう感じも大切にしたいですし。

今回の機会も、どういう形になるか分かんないですけど、「やってよかった」っていう形にしたいし、今日も心揺さぶられる時間でした。

もう、一回家に帰って、紅茶飲みながら自分の中でフィードバックですよ。
(今日の話は)まだ、わたし消化しきれていないので、糖質が必要なんですよ、頭つかったので(笑)
ケーキを2個ぐらい食べないと。

森嶋 拓
進行

なるほど(笑)

川田 由紀
保育士

それぞれが、やりたいことをやればいいと思うんですよね。
フリーランス保育士がみんな私みたいな感じかというとそうじゃなくて、職人の人もいるんですよ。
目の前の親子に対して丁寧な保育をやりたいんですっていう人もいるから、それはそれで良くて。
何が正解、どっちが正解・不正解とかないから。

私は、多分広めたい。
自分が好きなことを広めたいとか、知ってほしいって思いが強いタイプなんですよね。

森嶋 拓
進行

なるほど。でも、僕もけっこう欲深い方だと思うので(笑)

秋元 さなえ
アーティスト

ギラギラ系ですか?(笑)

森嶋 拓
進行

ギラギラしているかは分からないですけど(笑)
でも、こういう活動もある意味そういうことでもあると思うし、知ってもらうためにやっているっていうことはありますもんね。
社会の空気を変えたいっていう、そんな欲望ですね。

結局、砂漠に水をあげているような行為だなっていうのは、たまに思うんですよ。
どんな活動においても。
活動をやめたら、すぐに水は乾いてしまう、砂漠に戻ってしまう、みたいな意味で。

でも、それでもたまに花を咲かせる人とかもいて。
それは水をまかなかったら、咲かなかったかもしれない訳で。
だから、無駄とは決して言えないんですけども。
でも、本当は循環を生むことができたとしたら、やっぱりそれが一番楽しいですよね。

なので、この教育とアートの活動も、本当に結果についてはあんまり考えていなくて、ただ少しずつ影響が広がっていけばいいなと思います。

川田 由紀
保育士

わたしは、作品展があったとして、それを観に行く一般的な観客?なんて言ったらいいかわからないんですけど、それに一番近い人だと思うから、そういう人から見えた視点が変化していくことって、何かしら周りにも影響があるのではないかと勝手に思っています。

わたしは、今のわたしだからこそ見えているものがあるのかなと思うし、その変化も楽しみ、すごい楽しいです。

……やっぱり、ケーキ2個ぐらい食べたいですね、今日は(笑)

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