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03 ポテンシャルヒアリング Vol.5

戦争を伝えることへの距離感と、作品を残すということ

実施日 2026.07.30

今回のポテンシャルヒアリングには、美術を中心に活動してきたNさんと、演劇・朗読活動を続けるSさんが参加しました。 Nさんは長く美術制作と教育に携わり、現在は新しい土地へ移り、これからの制作や生き方を模索しています。Sさんは俳優として活動しながら、戦争体験者の手記を朗読する活動を続けています。

POINTS

この記録のポイント

  1. 01新しい土地で、何をつくるのか
  2. 02作品は、なぜ残すのか
  3. 03戦争を「伝える」ことへの距離感
ARTICLE本文

ポテンシャルヒアリング・アーカイブVol.5

戦争を伝えることへの距離感と、作品を残すということ

今回のポテンシャルヒアリングには、美術を中心に活動してきたNさんと、演劇・朗読活動を続けるSさんが参加しました。

Nさんは長く美術制作と教育に携わり、現在は新しい土地へ移り、これからの制作や生き方を模索しています。
Sさんは俳優として活動しながら、戦争体験者の手記を朗読する活動を続けています。

それぞれが現在抱えている問いや、活動を続けていく上で感じていることについて話しました。

実施日:2026年7月30日

新しい土地で、何をつくるのか

Nさんは、これまで平面作品を中心に制作し、近年は映像にも取り組んできました。
一方で、美術教員として働きながら制作を続けてきた経緯もあります。

現在は仕事を離れ、新しい土地へ移住したばかり。
まずは地域の歴史や文化を知るところから始めたいと話します。
図書館に残る地域資料を調べたり、デジタル制作環境を備えた施設を知ったりする中で、自分がこれまでやってきたことと地域との接点を探しています。

また、移住に伴って、自身の過去作品を大量に処分した経験もありました。
作品をつくり続けてきた本人にとって、その経験は、

「作品はどう残っていくのか」

をあらためて考えるきっかけになったといいます。

作品は、なぜ残すのか

Nさんが現在感じている大きな問いのひとつが、作品の残り方です。

作家が一生懸命つくった作品も、その作品や背景を知らない人にとっては価値がわからず、場合によっては「ゴミ」として扱われてしまう。
一方で、社会に残っていく作品も、人気があるもの、売れたもの、有名になったものに偏ってしまうのではないか。
そんな違和感を話しました。

そこにSさんから、
「なぜ残したいと思うのか」
という問いが返されました。

Nさんは、表現には「発見」があると話します。
教員時代、子どもたちが作品や素材に触れ、何かを発見した瞬間を見てきた。
そうした体験や発見が次の表現や考え方につながっていくのであれば、作品や記録が残ることにも意味があるのではないか。

ただ、何を、どのように残すのか。
地域で新たに知った出来事も含め、それを自分の表現としてどう扱うのか。

まだ答えは定まっていません。

制作をどう続けるのか。
作品をどう残すのか。
そして、自分自身がこれからどう生きていくのか。

いくつもの問いが重なっている現在地が語られました。

戦争を「伝える」ことへの距離感

Sさんは、長く俳優として活動してきました。

数年前、難民をテーマにした国際的な舞台作品への参加をきっかけに、戦争や難民について考えるようになり、現在は戦争体験者の手記を朗読する活動を続けています。

ただし、Sさんが目指しているのは、強いメッセージを掲げて「戦争反対」を訴えることだけではありません。
手記を読んでいると、現在の自分には共感できない考え方や、異なる時代の価値観にも出会います。

 それをすぐに否定するのではなく、
「そういう時代に、この人はこう生きたのだ」
と思いながら、書いてあることをただ読む。

知らないことだらけのことを調べ、読みながら出会い、また知っていく。
ただひたすら走りながら考えるという感覚。

声高に「戦争反対!」と唱えるのではなく、この活動を通じて、さまざまな人と出会いたい。

そんな姿勢も語られました。

地域の人自身が、手記を読む

Sさんが今年取り組むのは、自分一人で朗読する活動とは少し異なります。
地域に残された手記を、その土地の人たちと一緒に読み解き、声に出して練習し、地域の人の前で朗読するという試みです。

なぜ、地域の人自身が読むのか。

自分が暮らす土地の出来事を知り、何度も声に出して練習することで、手記を書いた一人の人の経験の断片が、読む人自身の中に残るのではないかと話します。

それが、
「その人自身の中の平和の種になったらいい」
という言葉もありました。

また、歴史の教科書には大きな出来事や有名な人物は残る一方で、名もない人々の小さな声は消えていく
そうした小さな声を拾い、誰かがふと気づくきっかけをつくりたいとも話しました。

「残す」という問いから広がったこと

この話を受けてNさんからは、地域に存在する出来事や記憶を、どう伝えるのかという話が出ました。

新しい土地で暮らし始め、過去に地域で起きた出来事を知ったものの、現在暮らしている人でも知らないことがある。
そうした出来事を掘り起こすことは必要なのか。
残した方がよいものなのか。

そして、それをアーティストが扱うとしたら、どう表現するのか

Nさん自身も答えを持っているわけではなく、Sさんの話を聞きながら考えている様子でした。
一方でNさんは、子どもたちや地域の人の間で、歌や体験が自然に受け継がれていった自身の経験にも触れました。

楽しい体験や共有できるものが、世代を越えて残っていく
「残す」と言っても、作品そのものを保存することだけではないのかもしれません。

活動を続けるために、何が必要なのか

後半では、「アートのマネタイズを考える一年間」に何を期待しているかという話に移りました。

Sさんがまず挙げたのは、全国各地とのつながりです。
地域に残る戦争体験や資料、その土地で活動する人たちとつながりながら、小さな取り組みを各地で行ってみたい。

同時に、活動を続けるためのお金についても課題を感じています。

ただ、大きな利益を上げたいというより、
「やっていく上で辛くならない状態」
をつくりたいと話しました。

劇場でなくてもいい。
カフェや寺院など、その土地にある場所を使い、人とつながりながら活動する。

一方で、移動費、人件費、広報、制作、事務、集客など、実際に活動を行うためにはさまざまについて回ることがあります。

そういった負担を
「なるべくなら、どんどん軽くなりたい」
とも話しました。

創作に向き合う。
人と向き合う。
自分と向き合う。

本来やりたいことに、もっと集中できる状態をつくりたい。

マネタイズを考える上でも、収入をどう増やすかだけではなく、同じ目線で活動を支える仲間の見つけ方や、分担の仕方をどう構築していくのかという課題が見えてきました。

手記の朗読から広がる表現の世界

対話の終盤、Sさんは、
「パフォーマンスを通じて人とつながりたい」
と話しました。

戦争や歴史を扱う活動について話してきたSさんですが、この言葉からは、それだけではない活動の広がりも見えてきました。

これまでにも、戦争や難民など、さまざまなテーマを扱った表現に関わってきたSさん。
何をテーマにするかはその時々で変わっても、表現を通して人と出会い、つながっていくことは、その活動に通底しているもののひとつなのかもしれません。

その後、Sさんから紹介されたのが、絵から作られた封筒を使った活動でした。

誰かが絵を描く。
別の誰かが封筒をつくる。
その封筒が別の土地へ運ばれる。
知らない誰かが、自分の好きな一枚を選ぶ。
そして、その中に誰かの平和への願いがこもった言葉が入っている。

さまざまな人の手を渡りながら、一つの表現が知らない誰かへ届いていく

このパフォーマンスは、言葉の通じない海外で、メッセージを届ける方法を模索するなかで生み出されました。
戦争を扱う活動から始まった話は、いつしか、表現を通して人と人がどう出会えるのかという話へと広がっていきました。

今回の対話

今回のヒアリングでは、二人が同じ答えにたどり着いたわけではありません。

Nさんは、新しい土地で何をつくるのか、作品をなぜ残すのか、自分自身がこれからどう活動を続けていくのかを模索しています。
Sさんは、手記の朗読や地域の人との活動を通して、表現から生まれるつながりを各地へ広げながら、無理なく活動を続けられる形を探しています。 

その中で、作品を残すとはどういうことなのか。
地域に残る記憶をどう扱うのか。
誰かの経験を次の世代へ渡すとはどういうことなのか。
表現者が活動を続けるためには何が必要なのか。

それぞれの話から、いくつもの問いが生まれました。

答えをひとつにまとめるのではなく、それぞれが持っている問いや迷いを持ち寄り、互いの話を聞きながら考えていく
今回も、そんな対話の時間となりました。

※本要約は、当日の発言内容をもとにAIを活用して作成し、森嶋拓(スパークプラグ・アライアンス)が内容を確認・編集したうえで、参加者の確認を経て公開しています。

アートのマネタイズを考える一年間とは?

「アートのマネタイズ」を、作品を売ることや収益を上げることだけに限定せず、表現活動を社会と接続し、持続可能な形で続けていく方法として考える一年間のプロジェクトです。

アーティストやアートワーカー、企業、行政、地域、教育・福祉関係者などが問いや実践を持ち寄り、対話やヒアリング、小さな実証実験を通して、新しい活動の可能性を探っていきます。

活動の一覧はこちら
https://artkids-net.com/am1/

PROJECT

アートのマネタイズを考える一年間

問いを持ち寄り、対話を重ね、走りながら考える一年間。わかりやすい答えに急がず、途中の問いも記録していくプロジェクトです。

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