ポテンシャルヒアリング・アーカイブVol.4
若者と社会をつなぐ、アートと表現の実践
アートは、人と社会のあいだに何をつくれるのか
今回のポテンシャルヒアリングでは、不登校経験のある若者と表現活動を行う方、社会から孤立しがちな若者とアートをつなぐ活動を行う方にご参加いただきました。
活動の方法や背景は異なりますが、話を聞いていくと、アートを通して人と人の関係が生まれたり、それまでとは違う役割や関わり方が生まれたりする場面が、それぞれの実践の中にありました。
同時に、そうした活動をどう継続していくのかという現実的な課題も共通していました。
偶然性が、自己表現へのハードルを下げる
一人の参加者は、紙を折って染める「折り染め」を使い、不登校経験のある若者たちと活動しています。
折り染めには、染めて紙を開くまでどんな模様になるか分からない偶然性があります。
絵を褒められても「誰でも描ける」「上手ではない」と否定してしまう人が、折り染めの場合には「自分も気に入っています」と自然に受け取ることができる。
そうした経験を重ねるうちに、自分自身が描いた絵についても、褒められたときに「ありがとう」と言えるようになったケースがあったといいます。
さらに活動では、若者自身がワークショップの「先生」になります。
すべてを一人で教えるのではなく、紙の折り方、染め方など工程を細かく分け、それぞれが担当できる部分を持つ。完璧にできることを前提にしないことで、人に教える側へ回るハードルを下げています。
一般の参加者から「先生、これはどうするんですか?」と聞かれ、自分が知っていることを誰かに伝える。
そこにも、普段とは違う関係が生まれていました。
アートが間にあると、話せることがある
もう一人の参加者は、若者支援を行う団体と連携し、美術館での鑑賞、アーティストによるワークショップ、若者の作品展示などを行っています。
人とのコミュニケーションに難しさを感じている若者でも、作品を一緒に見ながら話すと、自然に言葉が出てくることがあるといいます。
アートには、ひとつの正解がありません。
感じたことについて「正しい」「間違っている」と評価されるのではなく、そのまま受け止めてもらえる。
作品を見ることだけでなく、そこにいる人との関係をつくるうえでも、アートが媒介になっています。
活動を続けるなかでは、繰り返し参加する若者も増え、新しい参加者を誘ってくれたり、「いつか自分も活動する側に回りたい」と話したりするようになったケースもあるそうです。
「支援する人」と「支援される人」だけではなく、一緒にアートを楽しむ人として関われることも、この活動が大切にしていることのひとつでした。
続けたい。でも、続けるためのお金が難しい
一方で、二つの活動に共通していたのが、継続の難しさです。
若者自身から十分な参加費を受け取ることは難しく、これまでは助成金などを活用しながら活動してきました。
しかし、助成金は毎年獲得できるとは限りません。
採択されても事業費のすべてが賄われるわけではなく、申請や会計、報告にも大きな労力がかかります。
材料費や会場費、広報物の制作費など、活動をすることで必ず発生する経費もあります。
また、アーティストと協働する活動では、
「協力してくれるアーティストには、きちんと対価を支払いたい」
という話もありました。
社会的な目的を持つ活動だからこそ、関わる人の善意や無償労働だけに頼らず、どう継続できる形にしていくのか。
「マネタイズ」という言葉の背景にある、かなり具体的な課題が見えてきました。
アートは「余裕がある人のもの」なのか
話は次第に、社会の中でアートがどのように位置づけられているのかという問いにも広がりました。
若者支援の現場では、まず住居や食事、仕事などが優先されます。
そのため、アートや文化体験は、どうしても優先順位の低いものとして扱われやすい。
一方で、最近では「体験格差」という言葉も使われるようになり、すぐに仕事や収入へ結びつかない体験にも意味があるという理解が少しずつ広がっている、という話がありました。
教育についても、
「上手に描く」
「丁寧につくる」
だけではなく、一人ひとりの発想や感じ方、表現そのものをもっと受け止められるのではないかという意見が出ました。
アートは一部の得意な人だけが行うものなのか。
それとも、誰もが自分なりに表現し、他者や世界と関わるためのものなのか。
活動を続けるためのお金について話していたはずが、いつの間にか、そもそもアートを社会の中でどう捉えるのかという問いにもつながっていきました。
違う活動だからこそ、見えてくるもの
対話の終盤、参加者からは、
「やっていることは違うけれど、共通しているものがある」
という言葉が出ました。
日々活動していると、「本当に意味があるのだろうか」と孤独を感じることもある。
だからこそ、似た問題意識を持ちながら別の方法で実践している人と出会うこと自体が支えになる。
また、
「どこかで一緒にできることがあるかもしれない」
という話も生まれました。
この場ですぐに何かを決めたわけではありません。
ただ、これまで接点のなかった二つの活動が出会ったことで、新しい可能性を考える入口が少しだけ生まれました。
まだ、何になるかは分からない
最後には、この「アートのマネタイズを考える一年間」そのものについても話しました
このプロジェクトには、最初から完成したゴールやプログラムが用意されているわけではありません。
助成金、企業との関係、活動を続ける仕組み、アートの価値の伝え方。
これまで当たり前だった構造を一度分解し、さまざまな人との対話や小さな実践を繰り返しながら、必要であれば途中で計画そのものもつくり直していく。
そんな進め方を考えています。
参加者からは、
「何をするか決まりきっていないところが新鮮」
という声がある一方で、
「先が見えない不安もある」
という率直な言葉もありました。
それでも、これからさまざまな人と出会い、話す中から、新しいアイデアや実践につながるかもしれない。
今回の対話も、まだその途中です。
答えを確認するためではなく、まだ名前のない可能性を探していく。
そんな一年間の入口として、それぞれの活動と、それぞれが抱えている問いを持ち寄る時間となりました。
※本要約は、当日の発言内容をもとにAIを活用して作成し、森嶋拓(スパークプラグ・アライアンス)が内容を確認・編集したうえで、参加者の確認を経て公開しています。
アートのマネタイズを考える一年間とは?
「アートのマネタイズ」を、作品を売ることや収益を上げることだけに限定せず、表現活動を社会と接続し、持続可能な形で続けていく方法として考える一年間のプロジェクトです。
アーティストやアートワーカー、企業、行政、地域、教育・福祉関係者などが問いや実践を持ち寄り、対話やヒアリング、小さな実証実験を通して、新しい活動の可能性を探っていきます。
活動の一覧はこちら
https://artkids-net.com/am1/



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