ポテンシャルヒアリング・アーカイブVol.2
地域・福祉・ものづくり
それぞれの実践、その先にあるもの
今回のポテンシャルヒアリングには、ガラス工芸、イラスト制作と中間支援、障がいのある方のアート活動と食に関わる事業など、異なる領域で活動する3名が参加しました。
- Tさん|ガラス作家
- Yさん|イラスト制作・中間支援
- Hさん|施設運営・障がいアート・フードプロデューサー
それぞれの現在地や課題を共有しながら、活動をどのように社会や地域、仕事へつなげていくのかを考えました。
実施日:2026年7月24日
制作者と依頼者の間に立つ、新しい伴走の形
Yさんは、イラスト制作や初心者向けのPhotoshop講座、お絵描きワークショップなどを行っています。
現在考えているのは、イラストレーターやデザイナーと、初めて制作を依頼する事業者や個人の間に立つ「伴走型プランナー」のような役割です。
制作を依頼したいと思っていても、どのように相談し、何を準備すればよいのか分からない人は少なくありません。
一方で、制作者側も打ち合わせや条件整理に多くの時間を取られ、肝心の制作時間を確保できなくなることがあります。
Yさん自身も、こうした課題を経験してきました。
制作者と依頼者の間に立ち、双方の考えや希望を整理しながら、一つのゴールへ向かう過程を支える。さらに、活動上の悩みを共有できるフリーランス同士のつながりや居場所もつくれないかと考えています。
対話では、この「間に立つ仕事」の価値を、どのように言語化し、対価へつなげていくのかが一つの論点になりました。
仲介や調整は外から見えにくい仕事です。しかし、制作を円滑に進め、双方の負担を減らすためには欠かせない役割でもあります。
絵を描くことが、居場所になる
Yさんは、自由に画材を使って絵を描ける場を開いた経験についても話しました。
そこでは、久しぶりに絵を描く人や、使ってみたかった画材に触れる人、親子や友人同士で参加する人の姿がありました。
絵を上達させるための講座ではなく、ただ描くことを楽しむ時間であっても、その場が誰かにとっての居場所になることがあります。
また、Yさんには就労支援事業所で働いた経験があります。
そのなかでは、魅力的な作品が生まれていても、予算や設備、販売場所の不足によって、外部へ届けられない現実がありました。
アートの場や表現の機会は求められている一方で、それを継続可能な仕組みにする段階では、多くのハードルがあります。
Yさんの活動には、制作する人と依頼者だけでなく、表現したい人と社会との間をつなぐ可能性も感じられました。
函館の風景と記憶を、ガラスに映す
Tさんは、これまでにガラス作品の制作や体験ワークショップを行ってきました。
現在は函館に拠点を移し、地域に根ざした作品づくりを模索している最中です。
特に構想しているのが、函館旧市街の建築物や石畳、港町の風景などをモチーフにした作品です。
外国文化と日本の建築文化が混ざり合う和洋折衷の建物、坂道によって異なる石畳、港に並ぶ漁船など、函館にはその土地にしかない景観があります。
そうした地域固有の要素を、テキスタイルのような図案へ展開し、ステンドグラスなどの平面作品として表現することを考えています。
単に函館を題材にした土産物をつくるのではなく、ガラスという素材を通して地域の記憶や風景を捉え直し、作品をきっかけに函館へ関心を持つ人を増やしたいと話しました。
収益性と作家性をどう両立するか
ガラス工房では、体験プログラムが重要な収益源になることがあります。
一方で、短い時間で多くの参加者を受け入れる形式では、完成するものが似通いやすく、場所や制作者ごとの違いが見えにくくなるという課題もあります。
Tさんは、体験そのものを否定しているわけではありません。
体験を行うのであれば、どこで参加しても同じものではなく、函館やTさん自身の考え方が反映された内容にしたいと考えています。
また、見た目だけではなく、実際に使いやすく、美しいガラス作品を届けたいという思いも語られました。
現在の大きな課題は、制作設備と地域でのつながりです。
ガラス制作には高額な設備や継続的な運営費が必要です。
函館には利用できる共同工房も少なく、設備を使う工程については、道外の工房を借りる必要があります。
まずは外部の設備も活用しながら、Tさんの方向性を象徴する作品を一つ形にすること。
その作品を起点に、事業計画や資金調達、地域との連携を進めていく可能性が話し合われました。
障がいアートと食、場所をつなぐ
Hさんは、障がい者施設のマルシェ運営やアート活動の支援、食に関する企画などを行っています。
今後は新たに物件を借り、障がいのある方の作品を展示・販売する場と、訪日観光客などを対象とした料理教室を始める予定です。
これまでの活動を通じて、アートに力を入れている福祉施設や、魅力的な作品を制作する人たちとのネットワークができています。
しかし、作品を展示するだけでは、安定した売上につなげることは容易ではありません。
そこで、作品そのものに加えて、絵柄を生かした一点もののバッグなど、アートと日常生活をつなぐ商品をつくれないかと考えています。
また、新しい場所では、料理教室を訪れた人が作品に触れたり、アートを使った商品を手に取ったりすることもできます。
食、アート、福祉という、これまで別々に見えていた活動が、一つの場所を持つことでつながり始めています。
既存の障がいアート商品とは違う道を探す
対話では、障がいのある方の作品を商品化する既存の事例をそのまま踏襲するのではなく、Hさんだからこそできる形を探す必要があるのではないか、という話になりました。
Hさんの強みは、福祉分野とのつながりだけではありません。
編集、食、場の運営、観光客との接点など、複数の経験を持っています。
障がいのある方の絵を商品に印刷して販売するだけではなく、食文化や地域の体験、空間全体を含めて再編集することで、これまでにないプロジェクトが生まれる可能性があります。
重要なのは、「何でもある場所」にすることではなく、Hさんの経験が交差するところに、他にはない一つの軸を見つけることです。
参加者同士の対話から生まれた可能性
後半には、参加者同士で互いの活動について感想や意見を交わしました。
Yさんからは、障がいのある方の作品が持つ力や、福祉施設同士、食、商品開発などを組み合わせる可能性について意見が出ました。
Tさんからは、手仕事には一人ひとりの違いや揺らぎが必ず表れるため、その個性自体が一点ものの価値になり得るという話がありました。
Hさんからは、Tさんのガラスと函館の風景を結びつける構想に対して、観光や食の体験とも連携できるのではないかという提案がありました。
Yさんの中間支援の構想についても、絵を仕事にしたいと思いながら、どのように活動を始めればよいか分からない人にとって、伴走者の存在は大きいという声が寄せられました。
3名は活動分野こそ異なりますが、
- 表現する人と社会をつなぐこと
- 地域固有の価値を見つけること
- 作品や活動を日常のなかへ届けること
- 一人では難しい部分を、他者との協働で補うこと
という点で重なっていました。
散りばめられた経験を、ひとつの道筋へ
今回の対話で共通して見えてきたのは、自分の中にあるさまざまなスキルや経験、関心を、ひとつの文脈として捉え直すことの大切さでした。
複数の経験や技術を持っていることは、大きな強みです。
ただ、それぞれが別々のものとして存在していると、活動の核や、これから向かう方向は見えにくくなるかもしれません。
大切なのは、要素を減らしたり、外から見える分かりやすさに当てはめたりすることではありません。
これまで続けてきたことや、繰り返し関心を向けてきたことの間に、どのようなつながりがあるのかを見つけていくことです。
Yさんにとっては、イラスト制作や講師業の先にある「人と人の間に立つ力」。
Tさんにとっては、体験の中で感じた違和感や、函館の風景や記憶を、ガラスという素材へ変換する表現。
Hさんにとっては、福祉、食文化、編集、場づくりを横断してきた経験と感性です。
それぞれの要素の奥にある、共通した関心や姿勢を見つけること。
それが活動の核と結びついたとき、その人にしか生み出せない独自性が立ち上がってくるのかもしれません。
完成された答えを急ぐのではなく、自分の中にあるものを捉え直しながら、「それは面白い」と思える実践を形にしていく。
今回のポテンシャルヒアリングは、参加者同士の具体的なつながりも生まれた、それぞれの道筋を探る最初の一歩となりました。
※本要約は、当日の発言内容をもとにAIを活用して作成し、森嶋拓(スパークプラグ・アライアンス)が内容を確認・編集したうえで、参加者の確認を経て公開しています。
アートのマネタイズを考える一年間とは?
「アートのマネタイズ」を、作品を売ることや収益を上げることだけに限定せず、表現活動を社会と接続し、持続可能な形で続けていく方法として考える一年間のプロジェクトです。
アーティストやアートワーカー、企業、行政、地域、教育・福祉関係者などが問いや実践を持ち寄り、対話やヒアリング、小さな実証実験を通して、新しい活動の可能性を探っていきます。
活動の一覧はこちら
https://artkids-net.com/am1/



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